スノウ・ディバイド
雪が降る。
白い結晶は視界を白く染め上げる。
彼の背中が見えなくなる。
私は待ってと手を差し出す。
冷たい空気がそれを阻む。
彼の背中は白にまぎれて消えて行く。
私は息を吐きだす。
濃厚な白が私の前に現れては消えて行った。
差し出した手を返す。
白い小さな結晶が掌に乗ると、溶けて消えた。
彼の熱も、溶けて、消えた。
ツゥ、と頬に滴が伝う。
それはぽたりと地面に落ちた。
でも、雪はそれを隠してしまう。
彼を隠したように、私の涙も隠してしまう。
泣こう。
雪が隠してくれるから。
雪が積もるように、悲しみは積もる。
雪が溶けるように、悲しみも消える。
ふわりと、肩に雪が積もった。
冷たくて、でも柔らかいそれを何故か優しいと思った。
春よ、早く来て。
でも、少しだけ待っていて。