春一番
庭に干している洗濯物が、強風にはためいている。
今にも飛びそうだが、しっかりと固定されているようで、飛ばされる心配はなさそうだ。
高校2年の井野嶽幌は、そんな洗濯物を眺めながら、既に終えた3学期の定期テストのことを考えていた。
「どーすっかなぁ」
「なにが?」
双子の姉の桜が、その様子を見ながら幌に聞いた。
「いやさ、この春休み。どこか遊びに行くかどうしようかってな。もう受験生だし、勉強もしなきゃならないだろうけど」
「そうだねー、とりあえず、春休みになってから決めたら?」
「あっという間に過ぎていく気しかないな……」
何も予定が書かれていない手帳を見ながら、幌が言った。