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環境保全魔王  作者: 望塩
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勇者回収のためにがんばる話

初連載をしてみようかと…当方、全くの素人なので表現など覚束ないところが多々あるかと思いますが、よろしくお願いします。

さてはて、巷でよくある異世界召還。


ロールプレイングゲームしかり、ファンタジー小説しかり。


勝てるエンディングに向かってサクセスストーリー。


愛だ、友情だ、努力だ、勝利だ、世界平和っだー!


そうだ。


フィクションだから、楽しめる。

他人ごとだからこそ、共感できる。


そんなファンタジーに憧れるのは十代で卒業したはずな俺、白井竜也(29)。

職業、某進学私立高校、生物教師…が、異世界召還されたのは…



教え子が勇者になったからです…


勘弁してくれ…




と、いうわけで、俺は目の前の自称『異世界の神様』を見た。


見た目はなぜか…ウサギだ。巨大なウサギが、フロックコートを着て、懐中時計を持っている。


おーい、ドジスン、君の妄想が漏れているぞ?



「君の世界の様式美とかいうのに則っての格好だったのだが?異世界に導くのは時計を持った白兎なのだろう?」


ウサギが訝しげに問いかける。


「それは某幼女愛好家が作った古典ファンタジー小説の中の基本であって、一般社会での基本じゃない」


俺はきっぱり言い切る。


というか、やっぱりルイス・キャロルの世界だったのか。


「ふむ、文化の違いは難しいな」


ウサギは頷いて懐中時計を仕舞う。


どうやら、本当に『様式美』のためだけに持っていたらしい。


「さて、白井竜也くん、突然ですまないが、君は現在死んでいる」


だろうな、うん。


あるもんな、最後の記憶。


何かが頭上から、とんでもない衝撃を受けて、あの一瞬の、ひやりとした焦げ臭さ。続く、怒涛の痛み。反転する世界。


あれで死なないっていうのも奇跡だし。


「ちなみに死因は地上20メートルから落下した鉄棒による脳髄損傷、および全身貫通、いわゆる、串刺しだな」



俺の人生、平凡にすぎたクライマックスで、まさかのヒートアップ。


どんな死に方なんだ。


「通常なら、君の魂は、正規の手続きをもって、この世界の質量保存の法則により、輪廻転生の一環に還るわけだが」


なんだ、その『正規の手続き』って…


「しかし、君には、現在もう一つの選択肢がある。私の世界で、魔王をやってみないか?」


人生を終えたところで、まさかのスカウト来たよ。


「なんなんだ、その魔王って…」


俺のつぶやきに、ウサギは大きく頷いた。


「平たく言えば、環境保全のための、異世界者返還使命に従事してもらいたい」


なんじゃそりゃ。



「私の世界は、ほぼ、君の世界の歴史における中世ヨーロッパの在り方になっている。現在のところ、だが。ただ、大きく異なることが2つある」


ウサギは懐からチョークを取り出し、背後から、黒板(キャスター付)を引き出した。ちょっとまて、今、それ、どこから引き出したんだ?


「すなわち、魔物と魔法だ」


ウサギはチョークで大きく『魔物』と書いた。


「さて、白井くんは生物学を教えているわけだから、当然、自然界のバランス…すなわち食物連鎖、という言葉は説明するまでもないだろう」


俺は軽く頷く。


「すなわち、生態系におけるバランスが崩れると、環境が変化する。環境の変化により、さらなる異常気象、ひいては世界環境の変化になるわけだ。私の世界は、今、この生態系のバランスが崩れようとしているのだ」


ウサギはヒゲをふるって、鼻先のチョークの粉に『けぷちゅんっ』という可愛らしいくしゃみをしながらも、淡々と説明する。


「私の世界には、魔物と称される生物がいるのだが、これはヒトという種属が増えすぎないように、生態系の双頂点に立っているのだ。だが、近年、ヒトの繁殖力は凄まじく、魔物は絶滅の危機にある」


魔物がレッドデータブックに載る世界って、それ、どんなだよ…


「だが、繁殖力だけなら、まだ自然の範囲内で収まる。問題は、外来種なのだ」


そして、ウサギは黒板を一撫でした。瞬間、外来種という赤字チョークで描かれた文字が現れる。


「ここで問題になるのは『魔法』と呼ばれる能力で、私の世界では生命体は、なんらかの魔法を行使できる。主に生命維持や繁殖活動に使うのだが、ヒトは、こちらの世界で言えば、火から原子力エネルギーを作り出したように、私の世界では、それこそ空間をゆがませてしまう力を生み出してしまった」


ウサギはため息をつく。


「何度やり直しても、ダメなのだ。…ヒトは、世界を壊しにかかる。


…数十世代前、ヒトの種は、勢力拡大のために、新たなる力を手に入れようとした。それが、異世界からの召還…魔物を滅ぼし、ヒトが生態系の頂点に立つための、新たな力だ。


いわゆる、『勇者召還』だ。その結果、琵琶湖にブラックバスを放つがごとく、勇者の存在はこの世界の生態系を壊しそうになった…」


異世界召還者=外来種。

確かに当てはまるが、その例えはどうなんだ?


「それで、私は手を打った。外来種が来たなら、それを元の世界に回収する存在が必要だと。こうして、勇者召還における、魔王発生という図式が私の世界に成り立ったわけだ。そして、それは効をそうし、百年前までは、決定的な環境破壊にはならなかった」


ウサギはなぜか遠い目をして呟いた。


「百年前までは、確かに、生態系のバランスを崩しながらも、それは決定打にはならなかった。だが、今回の召還されたヤツは…」


なんだ、なんだか、すごくイヤな予感がするんだが。


「私にはよく分からないが…今回の勇者はこちらの世界の神曰わく『中二病』なる病に感染して、その創造力たるや、すさまじいのだよ」


…聞かなかったことにしていいだろうか?


「私の世界には、希望の泉という、望みを叶える泉があるのだが、今までの歴代の異世界者達は、せいぜいが剣なり、筋力なりを増力する程度に活用していたのだ。ところが、ヤツは『チート』とかいう生態系も世界の秩序も法則も無視した能力を望みまくり、私としてはこれ以上の被害を拡大しないために、希望の泉を閉鎖せざるをえなかった」


チート…あああああ。


まさに『世界は俺の嫁』状態だ。


蹂躙される世界が浮かぶ。


「そしてヤツは、ただでさえ減少傾向にあった魔物をヒトの一方的な理由で殲滅し始めている。一刻も早い回収が必要なのだ」


環境破壊、および世界崩壊を引き起こしているのは、勇者…呼ぶなよ、そんなもん。


「私はこの世界の創造主だ。私にとって、ヒトだろうが、魔物だろうが、ミジンコだろうが、すべて大事な存在だ。そこに差はない。必要なのはバランスなのだ」


それは、確かに、俺だって生物教師だ。大学でも生態系の勉強くらいした。ことの理屈は分かる。


「理屈は分かったが、だが、相手は頭が沸いてるんだぞ?回収って言っても説得に応じるかも分からない、ましてや、俺が魔王なんだろ?倒されるって、つまりは殺されるだろう?

いや、そもそも、神様の力で回収くらいできるだろ?」


俺は思いついたまま、言葉を重ねる。


理屈は分かるが、俺は死んでいる。


確かに選択肢は増えているが、明らかにバッドエンディングに進みそうな選択肢なんぞ、メリットがない。


「説得に応じるかは、分からない。だが、望みがないわけでもない。なぜなら、今回の召還された勇者は君の関係者だ」


まさかの展開!


よしてくれ!


「3年A組、科学部部長、高瀬健一。君の教え子だろう?」


ウサギは器用に笑って見せた。


「勘弁してくれ…」


俺は、死んでから初めて、完全に脱力した。

…個人的に、チートは嫌いではないです。はい。

そして、こんな感じで連載するのだろうか。未だに機能がよくわかってません…

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