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現代怪談:深夜の注文

ええ、どうも。怪談師の『忌部インベ ムクロ』です。

ふぇっふぇっふぇ、筆が乗ってしまいまして、金曜に投稿しようかと思ってたんですがね、フライングってやつですかね。


……ふふ、今、目が合いましたね。

私のこの陰気な風貌と、「スマートスピーカー」という最新家電の取り合わせ。どうにも不釣り合いで、おかしみを感じていらっしゃるのでしょう?


無理もありません。何せ中身は『佐藤 留吉』ですからねぇ。

Wi-Fiのパスワードを入力するだけで脂汗をかき、接続ができただけで赤飯を炊こうとするような、そんなアナログな老人なんですよ、私は。

ですが、そんな私でも一つだけ知っていることがあります。

あの便利な機械は、繋がってはいけない「アチラ側」とも、いとも簡単にペアリングしてしまう……ということです。


それでは、ご所望の「スマートスピーカー」にまつわる、とあるお話をさせていただきましょうか。

B子さんは、ある日、ネット通販のタイムセールで投げ売りされていたスマートスピーカーを衝動買いし、枕元に置いて目覚まし代わりにしていました。


「ねえ、7時に起こして」


「明日の天気は?」


時折、「スミマセン、ヨクワカリマセン」とすっとぼけたり、元気な曲を頼んだのに演歌を流したりと、頓珍漢な反応をすることもありました。


ですが、一人暮らしの長いB子さんにとって、そんなポンコツな挙動さえも、まるで少し手のかかるペットか同居人ができたようで、かえって可愛らしく思えていたそうです。


声だけで生活が回る心地よさ。一度慣れると、もう指先一つ動かすのも億劫になるほど、彼女はその便利さに溺れていきました。


そんなある日のことです。

自宅に、一つの宅配便が届きました。 宛名は間違いなくB子さん。

けれど、注文した覚えはありません。

中身を開けると、そこに入っていたのは業務用の強力な粘着テープと、大きなブルーシートでした。


「あれ、私こんなの頼んだっけ……?」


B子さんは首をかしげました。近頃仕事が忙しく、記憶が曖昧だったこともあり、その時は「寝ぼけて操作しちゃったのかな」と、苦笑しながら返品手続きをしたそうです。

まあ、機械を使っていれば、そんな誤操作の一つや二つ、ありますよねぇ。


しかし、数日後にまた荷物が届きました。 今度は、太いロープと、小型のノコギリでした。


「……また?」


さすがに少し気味が悪くなったB子さんは、スマートスピーカーのアプリを開き、「音声注文履歴」を確認することにしました。

あの機械は、注文時の音声を録音していますからね。


自分の聞き間違いや、あるいはテレビの音を拾ってしまったのか、聞けばすぐに分かるはずです。


履歴には、確かに深夜2時、3時といった時間に注文されたログが残っていました。

B子さんがぐっすりと眠っているはずの時間帯です。


(まさか、寝言で注文してしまったの……?)


恐る恐る、再生ボタンを押しました。


スピーカーから流れてきたのは、B子さんの規則正しい寝息です。

『スー……、スー……』 ああ、やはり誤作動か、あるいは寝言が何か単語に聞こえてしまったのか。

そう思って安堵しかけた、その時でした。


寝息の合間を縫うように、スピーカーの「すぐ真横」、つまりB子さんの枕元数センチの距離から、男の低い声が録音されていたのです。


『……ロープ』

『……ノコギリ』

『……これで、バラせる』


B子さんの寝ている部屋には、誰もいるわけがないのです。

鍵もチェーンも掛かっていました。

けれど、録音された声は、明らかにB子さんの顔を覗き込むような距離で、囁いていたのです。


B子さんはその日のうちに実家へ逃げ帰りました。

警察にも相談しましたが、部屋に侵入の痕跡は一切なかったそうです。


ただ、一つだけ奇妙なことがありました。

B子さんが逃げ出す直前、コンセントを抜こうとスピーカーを手に取ったとき、底面がほんのりと、生暖かかったそうです。

まるで、今まで誰かが、そこでじっと息を潜めていたかのように……。

……いかがでしたか?

スマートスピーカーのマイク感度というのは、実に優秀ですねぇ。

持ち主の寝息だけでなく、その「隙間」に潜む同居人の欲望まで、正確に聞き取ってくれるのですから。


さて、あなたの家のスマートスピーカー。

たまに、話しかけてもいないのに、ライトがクルクルと光っていることはありませんか? あれ、アップデート中だと思っているのは人間だけで……。


実は、あなたのすぐ後ろにいる「誰か」の問いかけに、必死で耳を澄ませているのかもしれませんよ……?


それでは、また。 次はどのようなお題で、背筋を冷やしましょうか……。


次からは、毎週金曜22時頃の更新を予定していますよ。

みなさん、眠れぬ夜のお供に、ぜひ...

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