番外編3:異世界のレシピ帳
もしも、エリザベートがハンバーガーだけでなく、他のファーストフードの記憶も鮮明に思い出していたら――?
それは、ある雨の日のことだった。客足が遠のき、少し手持ち無沙汰になったエリザベートは、ふと、前世の記憶に深く潜ってみた。
「ハンバーガーの他にも……そうよ、色々あったわ!」
彼女の脳裏に蘇ったのは、黄金色の衣をまとった、ジューシーな鶏肉料理。そして、丸くて平たい生地の上に、様々な具材とチーズを乗せて焼いた、魅惑的な料理。
「フライドチキンと……ピザ!」
その名を口にしただけで、エリザベートのお腹がぐぅっと鳴った。
「これは、試してみるしかないわね!」
彼女は早速、鶏肉を仕入れ、記憶の中のレシピを再現し始めた。牛乳とスパイスを混ぜた液体に鶏肉を漬け込み、十数種類のハーブとスパイスをブレンドした特製の粉をまぶす。そして、高温の油で、外はカリカリ、中はジューシーになるよう、絶妙な時間で揚げていく。
キッチンに、抗いがたいスパイシーな香りが立ち込める。賄いの時間、スタッフの前に出されたそのフライドチキンは、瞬く間になくなった。
「エリザベートさん、これ、悪魔の食べ物ですよ! 止まらない!」
「ビールが欲しくなる味だぜ!」
大成功に気を良くしたエリザベートは、次にピザの開発に取り掛かった。小麦粉を発酵させた生地を薄く伸ばし、自家製のトマトソースを塗る。そこへ、サラミやピーマン、そしてたっぷりのとろけるチーズを乗せて、高温の石窯で一気に焼き上げる。
焼きあがったピザは、とろりとしたチーズと具材が渾然一体となり、まさに絶品だった。
「これも……いける!」
エリザベートは、これらの新メニューを「サイドメニュー」として売り出すことにした。
結果、バーガーパレスは、もはやハンバーガー屋では収まらない、「総合ファーストフード帝国」へと変貌を遂げた。
ハンバーガーを食べに来た客が、フライドチキンの匂いにつられて追加注文し、隣のテーブルのピザを見て、次回来る時の楽しみを見つける。客単価は跳ね上がり、店の売上はさらに飛躍的に伸びた。
「こうなったら、タコスも、ホットドッグも……!」
エリザベートのレシピ帳は、次々と異世界の味をこの世に生み出していく。
「エリザベート……。君の頭の中は、一体どうなっているんだ……」
その尽きることのないアイデアに、レオンは呆れながらも、心から彼女を頼もしく思うのだった。
これは、ハンバーガー女王が、ファーストフードの神となる、かもしれないifの物語。




