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初恋の人と再会したけど、彼女はもう婚約していた  作者: はねださら


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19/19

最終話 初恋は、思い出になった

 結婚式から、しばらく経った。


 季節が一つ進み、街の景色も少しずつ変わっていく。

 駅前の花壇が植え替えられ、朝の空気が軽くなった。


 俺の生活は、特別変わらない。

 仕事に行って、帰って、週末に洗濯をして、たまに外食をする。

 それだけだ。


 ただ、一つだけ違うことがある。


 彼女のことを思い出しても、胸が痛まなくなった。


 ふとした瞬間に、思い出すことはある。

 中学の廊下。

 夕方の公園。

 役所の窓口で名前を呼んだ、あの瞬間。


 でも、それはもう、感情を伴わない記憶だった。


 ある日の帰り道、駅前の信号で足を止めたとき、

 前方に見覚えのある後ろ姿を見つけた。


 相沢美咲だった。


 一瞬だけ、心臓が反応する。

 でも、すぐに落ち着いた。


 彼女は一人だった。

 以前よりも少し短くなった髪。

 歩き方に、迷いがない。


 信号が変わる。

 人の流れに押されるように、彼女がこちらに近づく。


 目が合った。


 驚いたように瞬きをして、

 それから、穏やかに笑った。


「久しぶり」


「……久しぶり」


 それだけで、十分だった。


「元気?」


「ああ」

「そっちは?」


「元気だよ」


 短い会話。

 でも、不自然さはない。


「じゃあ」


「ああ」


 それぞれ、別の方向へ歩き出す。

 振り返らなかった。

 振り返る必要がなかった。


 歩きながら、ふと思う。


 もし、あのとき告白していたら。

 もし、再会しなかったら。

 もし、違う選択をしていたら。


 そんな「もし」は、もう浮かばない。


 初恋は、人生を変えるほどの力を持っている。

 でも、それは必ずしも、叶う必要はない。


 叶わなかったからこそ、

 ちゃんと終わらせたからこそ、

 今の自分がいる。


 家に帰り、靴を脱ぐ。

 窓を開けると、夜風が心地いい。


 スマホに、新しい通知はない。

 それでいい。


 テーブルに置いたまま、深く息を吸う。


 初恋は、思い出になった。


 胸に残る傷でも、

 人生を縛る未練でもなく、

 静かに、自分を形作った記憶として。


 そして、俺の人生は、

 これからも、続いていく。


 それだけで、十分だった。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。


この物語は、

「もし、あのとき告白していたら」

という後悔から始まりながら、

最終的には

「それでも、今の人生を肯定できるか」

という問いに辿り着く話でした。


初恋は、叶わなかったからこそ美しい、

と言われることがあります。

でも実際には、

叶わなかった初恋は、ずっと胸の奥に残り続けることもあります。


再会してしまったら、なおさらです。


それでも、

好きだからこそ踏み込まない選択や、

選ばれなかった側が自分の人生を引き取る決断も、

確かに「大人の恋」なのではないかと思い、この物語を書きました。


誰かを奪わず、

誰かを悪者にせず、

それでも確かに恋をして、

ちゃんと終わらせる。


そんな物語を、

最後まで見届けてくださったことに、感謝しかありません。


もしこの作品が、

あなた自身の過去の恋や、

「あのとき別の選択をしていたら」という思いに、

ほんの少しでも寄り添えていたなら、

それ以上に嬉しいことはありません。


感想・評価など、

どんな一言でもいただけたら励みになります。


改めて、

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


また、次の物語でお会いできたら幸いです。

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