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初恋の人と再会したけど、彼女はもう婚約していた  作者: はねださら


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第18話 選ばれた未来


 告白をしてから、彼女とは連絡を取らなくなった。


 避けたわけじゃない。

 約束をしたわけでもない。


 ただ、お互いに「これ以上、言葉を重ねる必要がない」と分かっていた。


 数日後、仕事帰りに駅前を歩いていると、ふと彼女の姿を見かけた。

 隣には、高瀬がいた。


 並んで歩く二人は、特別なことをしているわけじゃない。

 買い物袋を持って、何気ない会話をしている。

 どこにでもいる、これから家庭を作っていく男女。


 それでも、見ただけで分かった。


 彼女は、もう迷っていない。


 横顔は穏やかで、表情に無理がない。

 高瀬の話に、小さく笑って、自然に頷いている。


 ――ああ、と思った。


 ちゃんと、選んだんだ。


 声をかける気にはならなかった。

 向こうも、こちらに気づいていない。


 そのまま、すれ違う。

 たったそれだけのことなのに、胸の奥で何かが静かに終わった。


 家に帰って、シャツを脱ぎ、ソファに座る。

 スマホを手に取って、しばらく画面を眺めてから、置いた。


 連絡が来ることはない。

 来ないことを、もう不安に思わない。


 数日後、一通のメッセージが届いた。


【結婚式、無事に終わりました】


 それだけだった。

 写真も、余計な言葉もない。


 少し迷ってから、返信する。


【おめでとう】

【幸せになって】


 既読がついて、すぐに返事が来た。


【ありがとう】

【蓮見くんにも、幸せが来ますように】


 それで、終わりだった。


 短くて、きれいで、余計な感情の入り込む余地がないやり取り。

 それが、今の距離だ。


 夜、窓を開ける。

 冷たい風が入ってきて、頭が冴える。


 選ばれた未来と、

 選ばれなかった可能性。


 どちらが正しいかなんて、比べる意味はない。

 彼女は、自分の人生を選んだ。

 俺は、それを尊重した。


 ただ、それだけのことだ。


 スマホを置いて、明日の予定を確認する。

 仕事があって、日常が続く。


 不思議と、胸は痛まなかった。


 終わった恋は、

 ちゃんと終わらせれば、

 人を前に進ませる。


 初恋は、もう俺の足を引っ張らない。


 それは、選ばれた未来が、

 きちんと前を向いて進んでいる証拠でもあった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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