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初恋の人と再会したけど、彼女はもう婚約していた  作者: はねださら


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第17話 過去形の告白


 会おう、と連絡したのは俺からだった。


 理由は書かなかった。

 書いてしまったら、逃げ道がなくなる気がしたからだ。


【少し、話せる?】

【短時間でいい】


 既読がついて、しばらく間が空いた。


【うん】

【大丈夫】


 それだけで、十分だった。


 待ち合わせは、駅から少し離れた公園だった。

 昼間は家族連れが多いが、平日の夕方は静かになる場所。


 先に着いて、ベンチに腰を下ろす。

 何を言うか、頭の中で何度も組み立てたはずなのに、

 いざその時間が近づくと、全部どうでもよくなる。


 彼女は、少し遅れてやってきた。

 薄手のコートを羽織って、髪をまとめている。


「待たせた?」


「いや」


 並んで座る。

 距離は、これまでで一番近くも遠くもない。


 しばらく、沈黙。


 風が吹いて、木の葉が擦れる音がした。


「……急に呼び出して、ごめん」


「ううん」


 彼女は、こちらを見なかった。

 俺も、正面の景色を見たまま話し始める。


「この前の夜のこと」

「あと、その後のやり取り」


 言葉を選びながら、続ける。


「何も言わなかったこと」

「少し後悔してる」


 彼女の肩が、わずかに動いた。


「でも」

「言わなかったのは、正しかったとも思ってる」


 矛盾している。

 でも、それが正直だった。


「俺は」

 一度、息を吸う。

「君の選択を、壊したくない」


 それは、最初から変わらない。


「ただ」

 ここから先は、逃げられない。

「自分の中で、この気持ちを整理したくて」


 彼女が、ゆっくりこちらを向いた。


 その目は、逃げていなかった。


「……うん」


 促すような声。


 俺は、正面を向いたまま、言った。


「中学の頃」

「君のことが、好きだった」


 過去形。

 でも、それだけじゃ足りない。


「再会してから」

「たぶん、また好きになってる」


 言ってしまった。

 胸の奥が、少しだけ軽くなる。


「でも」

 すぐに続ける。

「だからって、何かを求めるつもりはない」


 彼女のほうを見る。

 泣いてはいなかった。

 ただ、静かに聞いている。


「奪うつもりも」

「迷わせたいわけでもない」


 それが、何より大事だった。


「俺は」

「選ばれなくていい」

「ただ、このまま何も言わずに終わるのが、怖かった」


 言葉が、途切れる。

 それでも、最後まで言い切った。


「好きだった」

「今も、好きかもしれない」

「でも、それだけだ」


 沈黙が落ちる。


 公園の外を、車が通り過ぎる音。

 子どもの声が、遠くから聞こえる。


 彼女は、しばらく何も言わなかった。

 それから、小さく息を吐いて、言った。


「……ありがとう」


 その一言に、胸が締め付けられる。


「ちゃんと、言ってくれて」


 視線が合う。


「正直ね」

「言われたら、もっと迷うと思ってた」


 分かっていた。

 だから、今まで言わなかった。


「でも」

 彼女は、続けた。

「言われなかったら、きっと後で後悔してた」


 その言葉に、救われる。


「私」

「ちゃんと選ぶよ」


 選ぶ、という言葉の重さ。


「選んだ未来を」

「ちゃんと、大事にする」


 それが、答えだった。


「……うん」


 それ以上、言うことはなかった。


 しばらく並んで座ってから、立ち上がる。


「今日は、ありがとう」


「こちらこそ」


 駅へ向かう道を、別々に歩き出す。

 振り返らなかった。


 振り返らなくていいと、初めて思えた。


 過去形の告白は、

 何かを始めるためのものじゃない。


 終わらせるための言葉だ。


 そしてそれは、

 思っていたよりも、静かで、

 思っていたよりも、確かな区切りだった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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