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第5章「影の試練」
夜の帳が王都を包み込む中、リュカは秘密の地下道を一人で進んでいた。
胸に抱えた書物と共に、彼の心には覚悟が満ちていた。
「このままでは力を制御できずに、敵に飲み込まれてしまう」
母の言葉が脳裏に響く。
地下深くの古びた聖堂跡。そこが影織りの力を鍛える場所とされていた。
リュカは冷たい石の床にひざまずき、目を閉じた。
「影よ、我が力となれ」
静かな呟きと共に、彼の体から黒い霧が立ち上り、影が自らの意思を持って動き始めた。
最初は制御できなかった影が、徐々にリュカの命令に従い、形を成し始める。
しかし、そのたびに心の奥底に潜む暗い感情が揺れ動き、影の暴走が起こる危険もあった。
「力は使い方次第だ……」
自分自身に言い聞かせながら、リュカは影と共に歩む覚悟を固めた。
その時、外から遠くに響く鐘の音。
王都に新たな危機が迫っていることを知らせていた。
試練は終わらない。むしろ、これからが本当の戦いの始まりだった――。