第4章「教会の影」
冷たい朝霧が王都の石畳を覆い隠す中、リュカは宮廷の広間へと足を踏み入れた。
彼の胸にはまだ母から渡された古びた書物が重くのしかかっている。
「リュカ殿、待っていたぞ」
ひんやりとした声が響いた。
振り返ると、そこに立っていたのは教会の影の使者――暗黒騎士団の一員であるレンフォルだった。
黒い甲冑に身を包み、顔はほとんど見えなかったが、その眼光は鋭く冷酷だった。
「教会が貴族の権力争いに介入するとは珍しい」
リュカは警戒を隠せずに言った。
「我々は王国の安定を守るために動いている」
レンフォルは静かに言葉を続ける。
「だが、『影織り』の力を持つ者が現れたことは予想外だ。お前の力は危険だが、同時に利用価値もある」
リュカは鋭く問い返した。
「利用?それはどういう意味だ?」
レンフォルは一歩近づき、低く言った。
「我々教会は、影織りの力を封じるだけでなく、時にはそれを操る者をも必要としている。お前の力次第では、王国の未来が大きく変わる」
リュカの心は揺れ動いた。
味方か敵か、利用されるのか、あるいは自分が道を切り開くのか――。
その時、背後から一枚の手紙が彼の手に滑り込んだ。
それは、秘密結社からの挑戦状とも言える文面だった。
影が交錯し、王都の闇はさらに深まっていく――。