表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『影織りの王冠』(かげおりのおうかん)  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
◎第Ⅲ部 -継承の審判-〜再誕の記憶〜
24/41

第4話「眠れる遺都と、再誕の胎動」



古代の地、《エストリア遺都》。

王国成立以前に存在したとされる影織りの民の都市。今では砂に埋もれ、地図からも消されたその場所に、カインとノアは辿り着いた。


――その地下深く、石棺に刻まれた影の印章が、再び脈動を始めていた。


かつてこの地で、王権と魔法はひとつだった。

だが大陸統一の戦いの中で、影織りの民は裏切られ、滅ぼされた。

それでも彼らの一部は、知識と魔法を封じ、「王たる者にふさわしき者」が現れる日を待ち続けていた。


「ここが……影織りの始まり……」


ノアが呟くと、空気が震えた。

封印された記憶が彼の中で解き放たれていく。


彼の中にいるのは、最後の“記録の継承者”、

〈記憶の巫子〉と呼ばれた少女・エルシアの記憶だった。


「あなたが、未来を選ぶのなら……私のすべてを託します」

彼の内側で、優しく、しかしどこか哀しげな声が響いた。



遺都の最奥――白金の玉座が眠る《継承の間》。

そこには魔法と血で編まれた“審判の儀式場”が残されていた。


玉座に触れた瞬間、空間が反転し、カインとノアは幻影の中へと呑まれる。


そこに現れたのは、かつての王たちの影。


「継承者よ。我らを超えてみせよ」


“影の審問”が始まった。


カインは父・リュカの幻影と対峙する。

「お前が守ると誓ったものは、民か?正統か?それとも――自分自身か」


剣と剣、言葉と記憶が交錯する中、カインは叫ぶ。


「俺は……影でも血でもない! この国の未来を――誰かが選べるようにするために立つんだ!」


その言葉が、幻影を貫く。

玉座の封印が解け、継承の印がカインとノアの体に刻まれる。


だが――。


その瞬間、遺都全体が揺れた。

巨大な魔法障壁が破られ、教会と貴族軍による襲撃が始まったのだ。


先頭に立つのは、かつて王国の盾と呼ばれた男、レオニス=グランゼル。

そして影の聖騎士として復活した、死んだはずの男――カインの兄、アルヴァ・エルヴェルト。


「久しいな、弟よ。父を殺した罪……ここで償え」


「兄さん……っ!」


剣が交錯する。かつての兄弟が、今や敵同士として。


一方で、ノアの中に残る〈記憶の巫子〉の意識が、エルシアの最後の願いを告げる。


「私たちは、滅ぼされるために力を与えたのではない。

あなたが未来を生きるために、すべての影を照らすために――」


ノアは立ち上がり、遺都の魔法炉の中核に手をかざす。

その光が放たれ、世界の空に巨大な紋章が浮かび上がった。


それは、“影の継承”の始まりを告げるシンボル――。


世界が、新たな夜明けを迎える準備を始める。


しかしその光に気づいた者たちは、すぐに動き出した。

禁忌の魔術師、《影食らいの会》の残党、そして、死より帰還した“影の王女”――


継承は始まったばかり。

そして、再誕の胎動は、まだ序章にすぎなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ