第一話 レーニアス・レミル
さて、今日裁く犯罪者はレーニアス・レミルと言う、23歳の女性で無職らしい。知らないと思うから説明しておこう、この国では裁判は密閉されたこぢんまりとした部屋で一対一の面接のような形で行う。100を基準とするポイントが設定されていて、犯した犯罪別に引かれるポイントが決まっている。そのポイントが10以下になれば死刑、それ以外は一律で懲役30年が課せられる。例えば万引きをした犯罪者が来たとしよう。万引きは六法全書によれば1ポイント引くことになっているので99ポイントになる、この時点で懲役30年は決定される、その他余罪がないか洗いざらい確認し、もし10ポイント以下になれば死刑。といっても俺は今まで死刑判決を出したことはない。大体軽犯罪ばっかりだ。
そうこうしているうちに、部屋に手錠を嵌められたにこやかな顔をした女性、レーニアス・レミルが入ってきた。まあ多分、お金がなくて万引きしましたーとか言うんだろうと思いながらも俺はまず極めて丁寧に聞いた。「えっとね、キミはまず何をしてここに来たんだい?」
彼女はバシッと吐き捨てるようにいった。「殺人です」
「殺人だって?!」俺は今までこんな重い罪を犯した人間を裁いたことがない、ちょいとばかし動揺してしまった。と言うかまさかこんな可愛げのある彼女が人殺しなのかよ!こわっ!
「な、なるほど、、どうして人を殺すようなことをしたんだい?」
彼女は声高らかに言った。「いや憎かったからにきまってんじゃん!それ以外にある?」若干彼女に恐怖を覚えつつも会話を続ける。「その、具代的に何が犯罪動機なの?」そう言うと待ってましたと言わんばかりに楽しげに話し始めた。
「私は貧しい村で育ったの。でねその村には投票で選ばれた人間をいじめる風習があったの。」「なるほどそれでキミはそれに選ばれたと?」「え?違うよー。私の友達が選ばれたの。でね私、本当はそれになりたかったの!でも選ばれなかっただから殺した。」
何言ってるんだこいつ。怒りが沸々と湧いてきた。よし、こいつは死刑だ。それ以外あり得ない。そう思い、六法全書で殺人に関するページを探す。んーーーとっ、あった!なになに殺人は80ポイント引きますと、ん?80ポイント?え?あと10ポイントも足りないじゃん。嘘だろ?マジかよ、めんどくさいけど仕方ない、あれを使うか。そして俺は彼女にこう告げた。「余罪がないかどうか確認をした後に判決を下す。」「分かりました、では」そう言って彼女は足早に留置所まで帰って行った。俺が今回取ったのは1人の殺人では死刑判決を下す条件に当てはまっていないため他に犯罪を犯していないか調べ上げ、見つけ余罪分ポイントを引いて死刑にこぎつける方法だ。これを業界用語でハイエナというらしい。ハイエナのように執着深いからだとか。明日は彼女の育った村、ルミル村へ行くとしよう。一日の業務を済ませて俺はベットに駆け込んだ。いい夢が見れそうだ。