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佐々木は喪服に身を包み葬式会場にいた。
幼馴染の藤井が亡くなったと実家から連絡があったのは昨日の朝だった。そこからすぐに身支度を済ませその日の通夜に間に合うよう新幹線に飛び乗った。
藤井はクローゼットで首を吊って亡くなったとの事だ。状況から見て自殺で間違いなかった。大切な一人娘を亡くし藤井の両親は憔悴しきっていた。
佐々木は藤井の事が好きだった。本当な一緒に東京の大学を受けようと言いたかったが溺愛している一人娘をこの両親から取り上げる事は出来なかった。
葬式は滞りなく進んでいった。佐々木は葬式が終わればすぐに東京に帰ろうと思っていたが佐々木の母から藤井さんが淳平に渡したい物があるから明日家に来てくれと言われたのでこの日もう一泊する事になった。
翌日藤井家に着くと両親が出迎えてくれた。
客間に通されると藤井の父が口を開いた。
「淳平君生前は娘がお世話になったね。私達夫婦は淳平君の様な人に娘を預けたいそう思っていたんだ。恐らく娘も淳平君の事が好きだったと思うよ。」藤井の父は佐々木を真っ直ぐ見つめてそう言った。隣の母親は目にハンカチを押し当てていた。
「娘が残した日記があるんだ。中身を少し読んだけど今の私達には重すぎる。かといってこの日記を捨てる訳には行かないんだ私達夫婦がいつかは向き合わないといけないそんな日記なんだ。だから私達夫婦がその日記に向き合える日まで淳平君に日記を預かっていて欲しいんだ。引き受けてくれるかな?」
佐々木は静かに頷いた。