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藤井は家に帰ると毎日付けている日記を開いた。
そこには河合から浴びせられた罵詈雑言、財布からお金が抜かれた事、お気に入りだったコートに牛乳をかけられた事…今まで受けてきた虐めの内容が事細かに記されていた。「私って何の為に生きているのかな…」藤井がか細い声で呟いた。幼い頃から自分の意見を持つ事が大の苦手だった。なまじ勉強が出来た為高校や大学は親や教師が勧める学校にすんなり進学出来た。容姿も整っていて性格も大人しく人当たりが良い為友達も多く言い寄ってくる男も多かった。
だけどその結果が朝山に捨てられ、河合から執拗な虐めを受けている。あの時淳平と一緒に東京を行けば良かったと藤井は考えていた。
佐々木淳平は藤井の幼馴染で喧嘩は弱いけれどいつも優しく、藤井を大切にしてくれていた。藤井はそんな佐々木が好きだった。佐々木は頭が良く東京の有名私大に進学する事になった。藤井も成績だけだったら同じ大学に進学する事も出来たがその一歩を踏み出す事が出来なかった。
「淳平、来世は一緒になろうね。」藤井はか細い声でそう呟いた。