コロンの家のお隣のお婆さんが亡くなったので
病院で亡くなった隣の家のお婆さんのご遺体が家に戻った時の様子になります。
ホラーっほくもコメディっぽくもあります。
苦手な方はお避け下さい。
苦手な方はお避け下さい。
ずいぶん前の話。今の家ではなく、もうひとつの家の方。
雲ひとつない青空が清々しい日曜日の昼。
お隣の息子さんがウチに「母が病院で亡くなって今家に帰ってきています」と、知らせに来た。
めんどくさい説明は抜きにして、お隣さんちと旦那さんは親密ではないものの古い知り合い。
平日の葬式に出るほどの仲ではない。それでもこうして挨拶に来てくれているし、旦那様と相談し「お隣にお線香だけあげに行こう」となった。
初めて入るお隣さんの家。
コロンより年上の息子さんに和室に案内される。
整然と片付けられた広い和室の真ん中に布団が敷いてある。
そこに眠るお婆さん。
「この枕、ドライアイスなんですよ」
息子さんから背筋も凍る枕の秘密を明かされる。
お婆さんの頭の上側に息子さんが座り、お婆さんの左側にうちの旦那様、その横にコロンが座りお婆さんを囲む。
息子さんの話すお婆さんの懐かし話を聞く旦那様。
お婆さんの事はもちろんお隣さんの事もよく知らないコロンは、整然とした部屋の窓辺に置かれた真っ黒な人形が気になっていた。
20センチほどの大きさの立ち姿の人形。
キューピーちゃんのかたちにくるくるの髪が付いていると思って欲しい。
それが真っ黒。
もともと黒かったのではなく、ベビースモーカーの息子さんのせいでヤニで真っ黒になった感じ。
綺麗な部屋にお婆さんのご遺体と真っ黒な人形。
怖っ!こーーーーわ。
なんて考えていて息子さんの話は聞いてなかった。
「……で、……母は昔からお水をよく飲んでいて……亡くなると喉が渇くらしいんですよ。良かったらお水をあげて下さい」
そう言うと、水と大きな綿棒が入ったコップを差し出してきた。
えっ!?
え?え?え?死んだ人にどうやって?
知らない作法に驚き、息子さんの隣に居る旦那様の対応を見ようと横を向いた瞬間。
スッ…
旦那様が正座したまま一歩下がった。
そのため、息子さんの手が旦那様を通り越してコロンの前へ。
おおおおおいいいっっっっ!
いやわかんねーから!
旦那ゴルァ!!
「…え…っと……???」
戸惑うコロンに息子さんが「綿棒で口元を濡らしてあげて下さい」と笑顔で言う。
えぇ…
この息子さん、お婆さんが大好きなんだ…
全く悪意はないんだ。
泣きそうになりながら意を決してコップを手にする。
喉が渇いている→水を飲ませる→たっぷり飲みたいだろう?
そう解釈したコロンは、大きな綿棒に水をたっぷり吸わせ、水が滴る前に素早くお婆さんの口元へ。
サッッ
びちゃあ
お婆さんの口元がびしょ濡れに。
「あわわわ…ごごごこめんなさいっっ」
お婆さんの口元から首筋にだらりと流れる水。
息子さんが「お婆さん、いっぱい飲めて良かったねぇ」と言いながらタオルで拭いていた。
ひーえぇ…
どこぞの誰かが書いた箪笥のホラーより怖い気がする。
たぶんそれは家族がやるやつ。