えむちゃんと遠足
その日、コロンは駅で人を待っていた。
なろうで仲良くなった、えむちゃん待ちである。
本当はコロン一人で行くつもりでいた「鎌倉七福神巡り」
ちょっと話したらえむちゃんが一緒に行きたそうだった。
「お前行きたいんか?一緒に行くか?」(もっとちゃんとした言葉だよ!)と誘うと、5倍くらい丁寧な言葉で返事がきて、一緒に行く事になった。
えむちゃんとデート…
ああ。高校生男子が好きな女の子と初めてお出かけする気持ちってこんな感じかぁ。と、日々そわそわするコロン。
コロン一人で何度か行ったことがあるコース。忘れているのでもう一度予習復讐して忘れる。
まあ、当日どうにでもなるさ。
お昼ご飯はどうしようかな〜。検索。たぶん凄く混むだろう時間を計算したりした。
そして当日。
本来なら、人で溢れかえるはずの北鎌倉。
しかし、その日はほとんど人がいなかった。
何故なら。
土砂降りだから。
。。。
朝の9時に待ち合わせた北鎌倉。待ち合わせには早く行くタイプのコロン。
電車を乗り間違えて「新宿」待ち合わせなのに「池袋」まで行くような人って信じられない。
ガランとした北鎌倉駅のホーム。電車待ちする数人の外国人の一人がポケットからおにぎりを出した時、一緒に出てきたゴミが落ちた。
拾うのか拾わないのか、気づくのか気づかないのか。気になってイライラしながらえむちゃんを待っていた。
「お待たせしてすみません」
いつだってきちんとしているえむちゃんにほっこりしながら出発。
ホームを出れば土砂降り。
そこでコロンは自分が履いてきた雨靴を自慢する。
長くないおしゃれな雨靴。
「見て。えむちゃん。これ長靴。雨でも濡れないよ」
「ええ!いいですね!私は今日はもう諦めています」
「えむちゃんも買いなよ、長靴。なんで買わないの?」
などとしばらく長靴自慢で話が盛り上がる。
七福神巡りの前に、北鎌倉駅目の前。コロンが好きな「円覚寺」に寄る。
「ここコロン大好きなんだ。山門が凄くてね。どう凄いかはよくわからないんだけど、見たら凄いから」
と、見る。
「わあ、本当ですね!」
円覚寺をサッと巡りすぐに出る。
そして次のお寺[浄智寺]へ。
何か行事があるのか、数人の業者さんがいた。
その場をすり抜けようとした時!!
業者さんの1人がえむちゃんに声を掛けた。えむちゃんの持ち物を褒めてきたのだった。知る人ぞ知る持ち物だった。コロン知らなかった。
その持ち物の説明をえむちゃんに求めるふりをして、えむちゃんと業者を引き離す。
フッ。えむちゃんに声かけるなんて100年早いわ!!
実はコロン。ここの布袋様が怖い。
怖い怖い言いながらえむちゃんを布袋様のところまで導く。お願いしているえむちゃんを遠くから見守るコロン。
「怖かった?」「そうでもないですけど、言われるとそんな気もします」と、無理矢理怖い事にさせるコロン。
そして歩きながら次のお寺[鶴岡八幡宮]を目指す。
「えむちゃん。頭爆発してるよ」いつもサラサラのストレートヘアが今日は爆発してた。
「そうなんです。雨の日は爆発しちゃうんですよ。今日はコロンさんとデートだと思って凄く楽しみにしてたんですけど…」
「ゆるゆるウェーブがついてて可愛いよ。コロンも爆発してるから大丈夫」「コロンも凄く楽しみにしてたよ」「コロン、ハメハメハ大王と同じ心の持ち主だから雨の日にお出かけするなんてそうない」「えむちゃんコロンがあげた石鹸使ってみた?」
そんな事を話しながら歩く。
鶴岡八幡宮についたら、土砂降りの中で結婚式をやっていた。
お嫁さんは白無垢。周りで外国人観光客が写真を撮っているのが見える。
「わー白無垢濡れて可哀想!絶対「雨降って地固まる」って誰かが言ってるよね」そう言いながら長い階段を降りると、横に「茅の輪」があった。
「!!コロンこれやってみたかったの!!えむちゃんどうする?コロンはやってくるよ!!」
「私もやります!」
「うんうん!じゃあやろうね!」
「土砂降りだけど傘はさせないね。へーき?コロンはへーき。やってくる!」
決められたくぐり方をし、ヒトガタに願いを込めて息を吹きかける。
大満足で茅の輪くぐりを終え、弁天様の御朱印をもらう。
御朱印をもらうたびに凄いと喜ぶえむちゃん。それをコロンの手柄のように自慢する。
そして弁天様の横にある蓮池で、蓮の葉に溜まっては溢れる水を「面白いね」と言ってしばらく見ていた。
次の[宝戒寺]は法事の最中で中に入ることが出来ずに残念。
土っ砂降りの庭を眺めた。
次の[妙隆寺]に行く道で「腹切りやぐら」の説明をしながら歩く。「お化けでるよ。怖いよ」と心霊スポットだと教える。
妙隆寺は、小さくて見るところがないのですぐに出る。
次の[本覚寺]で、手作りの小さな顔型のお守りがあった。
「ねぇえむちゃん。これK山に似てない?」そういうと「似てます!可愛いですね!私これ買います」と言ってたくさんある顔の中からお気に入りの顔を選んでいた。
コロンはいらないと言ったが、今もずっと「あれ買っておけば良かった」と後悔している。
そしてランチタイム。
下調べして、行きたいオシャレなお店を見つけておいたので「えむちゃん、ここ行くから地図見てどうやって行くか教えて」と、パワハラでえむちゃんにナビさせる。
「え〜…と、こっちみたいです」ばか!そっちは墓だ!
「本当にそっち?墓だよ?」「でも矢印はこっちさしてます」「え〜怖。ちょっとそこの人に聞いてみる」
過去K山に騙されてから他人のナビを信用しないコロンは、えむちゃんのことも信用できずにお寺の人に聞く。※最初からお前やれよ!とのお言葉は受け付けません。
「通れる」との事。それからは黙ってえむちゃんのについて行く。
無事、お目当てのお店に到着。そのお店はオシャレな食器などが売っていて、コロンが求めていた浅い蓋ナシの土鍋があった。
「…ねえ、えむちゃん。コロン土鍋持って回っていい?」
実はちょっと恥ずかしかった。
「いいですよ」と快諾してくれるえむちゃん。えむちゃんの優しさに涙する土鍋をゲットしてホクホクのコロン。
途中、えむちゃんが古道具屋のショーウィンドウに飾られた鹿の角の刀置くやつを指差し「コロンさん。鹿の角ですよ、これ、かっこよくないですか?」と言う。
コロンの持ってる鹿の角をこうしろと?
「うん。でも、こうするには刀を買わないとダメだよね。コロン刀持ってない」と、言葉のナイフでえむちゃんをぶった斬る。
相変わらず土砂降りだけど、御朱印と土鍋と傘を持ってえむちゃんと共に次を目指す。
次に目指すのは七福神と関係ない「佐助稲荷」
大好きな場所である。
ザアザア雨でより一層「異世界感」のある道のり。
途中、素敵な洋館がある「ここね、レストランでモンブランが千円だったよ」とか、トンネルに入った時「前に白い人いるの見える?」「はい」「あれ、コロンしか見えてないわけじゃないよね?」なんてふざけながら進む。
ずっと来たかった佐助稲荷。嬉しい。
佐助稲荷で置物のお守りが欲しかったけど、現金がなくて我慢した。
つか高かった。犬と猫のそれぞれが欲しかったけど一個が2500円だった。二つ買ったら5000円…手持ちの現金がなくなってしまう。「鍋を買わなければ買えたのにな」と胸が痛かった。神社でPayPay使えんのかな。なんて考えながら黙っていた。
次の[長谷寺]と[御霊神社]に行くため、江ノ電に乗る。
長谷寺はめちゃくちゃ混むはずだから先に御霊神社へ。
鳥居の前を江ノ電が通過する御霊神社。猫がいるはずなんだけど、土砂降りでいなかった。
見どころ少ない御霊神社を出て長谷寺へ。
長谷寺へは、拝観料として券売機でチケットを購入しなければいけない。
この券売機がわかりにくい。あたふたしているコロンの隣でスマートにチケットを買うえむちゃん。そしてコロンと同じようにあたふたしている外国人観光客に声をかけられて、英語で対応してお手伝いしてセンキューなんて言われてる。
まだチケット買えてない日本人がここにいるのにっ!!
ぐぬぬ。
へーんっだっ!1人で買えるもんっ!!
プライドにかけて1人でチケットを買ったコロン。
長谷寺で御朱印をもらって、鎌倉七福神の御朱印集めは終了。
「ねぇ、えむちゃん。今日土砂降りで良かったね。御朱印書いてもらうのに待ち時間ゼロなんてありえないんだよ。こんなに早くクリアできるなんて無いんだよ」
と、待ち時間ゼロの凄さを力説した。
履いてきた雨靴も虚しく…靴がびしょ濡れだった。
えむちゃんみたいに最初から普通の靴で良かったな…と思うコロン。
藤沢駅でお茶して解散。
えむちゃんはケーキ、コロンはフルーツあんみつ。
乗っているフルーツでキウイとパイナップルが食べられないので、えむちゃんにもらってもらう。
楽しかった。
コロン、実は今日のお願いはぜーんぶえむちゃんに使った。
コロンのお願いは叶ったので、今回は「御礼」の七福神巡りだった。そこにえむちゃんが来たので「お願いを叶えてくださりありがとうございました。今日はお友達と来ました。彼女のお願いが叶いますように」と七福神にお願いした。
だからえむちゃんのお願いは叶うと思う。
コロンって神さまみたいだよね。ふふん。
えむちゃんが買ったお守り。