愛情のカス。カスの愛情。
コロンは「芸能人じゃあるまいし」という最強の言い訳を手に入れたので、色んなことをサボっている。
だがしかし。
ちょっとくらいは綺麗に見られたい。という「乙女心」を箪笥の奥から引っ張り出してみた。
干からびてカスカスになってる…
流石に可哀想なので、何かしようと買い物へ。
とりあえず、持ち主同様「薄汚れたシンデレラ」のようになった財布を新調した。
値段を見ずに買うという芸能人みたいな事をしたが、コロンの場合「ただ忘れていただけ」というヒヤリハット。
帰り際にふらっと覗いた化粧品コーナー。
《 潤いで満たされます 》
とのキャッチフレーズから目が離せない。
「ほんとに?ほんとに潤いで満たされる?」
ならば満たして欲しい!と、芸能人じゃない生活をしていたコロンは久しぶりにお高い美容液を購入した。
キャップがスポイトになっているタイプの「高い美容液」をポタポタと3滴、掌に落とす。
伸びが良いので3滴で充分。
だがしかし、手についたままの高い美容液がもったいない。
ほっぺに手を当てたまま「もったいない…」と考えた。
するとちょうど旦那様が洗面所から出てきた。
「顔洗った?」
「うん」
「じゃあ高い美容液塗ってあげる。手に残ったカスカスだけど」
恩着せがましくそう言って、旦那様の顔に高い美容液のカスカスが残った手を充てる。
最後の最後まで無駄にしない。
しかし旦那様の肌に届く前に、コロンの手に吸収された模様の高い美容液。
「なんかダメだった」と伝える。
「…どうせ俺のことカスと思ってんでしょ」
「うん。だから丁度いいよね。カスカスのカスカスで」
「酷ぇ…」
ただ「高い美容液がついた手で旦那様の顔を撫でた」だけだったが、旦那様のお肌も潤いに満たされる事を願ってやまないコロンであった。
おわり。
一応塗ってあげたんだから感謝してほしい。