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無自覚勇者奮闘記  作者: 猫姫
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飛竜攻略戦1

「ウガル、ここなんてどうだ?」

「いいな、ここにしよう」

旅団テントから離れた所に拠点を作る事にした。

流石に野宿ではやってられない。


樹木聖霊ドライアドよ…」

ウガルの呪文に巨木は鈍く揺れると木家ツリーハウスに変化した。


「へぇ…魔法って便利だな」

「そうでもない条件と触媒、それに魔力の対価必要」

よく分からないが、ドアを掛けた。


内装はそれなりにそろっているし台所もある。

便利としか言いようがなかった。


「魔法に興味ある?」

「うん!」

ウガルはにやりと笑い腰を掛けてテーブルに羊皮紙を広げる。


魔石コアはあるか?」

「これかな?」

旅に出て一ヵ月、小型の魔獣を倒したときに手に入れた魔獣石コアをポケットから出した。


「ふーん、聖石か良いもの持っているな」

「聖石?」

「聖石は…」

ウガル曰く、魔獣は魔王が持ち込んだ魔石をこちらの動物に埋め込んで作られる。

魔石を埋め込まれた動物は狂暴性が増し周囲を襲い、自己を高めるようになる。

そして魔獣が死ぬと、その魔石は死体を抜け出し他の動物に憑りつき強大になっていく。

昔、襲われた飛竜ワイバーンとかも蜥蜴かなにかからああなったんだろう。

冒険者ギルドはそういった魔石を狩り、処理して王都に送っているという。

その処理された魔石、魔獣化しない魔石を聖石という。

聖石は極稀に魔獣を倒したときに変化して出てくる事がある。

処理には費用がかかり希少価値が高く、高値で取引される。


「それをここに置いてくれ」

「ここか?」

羊皮紙に描かれた魔法陣の中央に置く。


「合図したら血を一滴、垂らせ…それじゃいくぞ…」

「なんか儀式めいてきたな、分かった」

『樹木の精霊よ、我は汝の盟友なり…ここに聖石を捧げる』

部屋の雰囲気が何か違ったなにかに変わった。

『願わくば、血の盟約を…かの者と…』

指先を少し切って血を垂らした。


―――光が溢れた。


「なん!?」

「慌てるな召喚中だ」

光が収まると、元の部屋に戻った。


「ふぅ…吃驚した」

「成功だ」

「ご主人さま、只今参ります」

目の前に二足歩行する猫のような獣人が現れた。


樹木聖霊ドライアドの眷属で守護獣だな」

家屋霊ケット・シーですよろしくお願いします、気が向いたらでいいですので名前を頂きたく願います…」

「名前…そうだな、ノアなんてどうだ?」

「…のあ、ノアっ!有難う御座います!!」

ケット・シーは光り輝くとその見た目を変化させた。


「メイド服?」

「名付けで魔力があがったか…」

まぁ猫が服を着た感じだしそんなには変わってない気がするが。


木家ツリーハウスの守護及び家事全般はお任せください…それでは…」

ケットシー・ノアの姿は見えなくなった。

いないのに存在感を感じる。


「これでここもいい感じに住みやすくなった」

「まぁ飛竜退治までの事だけどね」

~ご主人様、お外に誰か来てます~


「えっ、ノアの声が聞こえる?」

「精神感応だ、血の盟約したからそれで精霊回廊で繋がってる、じきに慣れる」

「えっと、お通ししてくれ…」

~かしこまりました~

頭の中に声が聞こえるのは変な感じだった。


「あ、あのぉ…お邪魔します…」

「お邪魔します」

「…お邪魔します」

見た顔だ、女性冒険者の三人組。


「えっと、ここは?」

「飛竜退治用の仮宿だよ、気にしないでくれ」

「…はい」

服装から察するに戦士、僧侶、魔法使いの駆け出しみたいだ。


「すいません、部屋があったら貸して欲しいんですが」

「いいですよって、なんだよウガル」

急に制してきたウガルに少し吃驚した。


「あんた達、何が出せる?無償で貸すこと出来ない」

「ウガル…」

「お前は黙ってろ、オレはこの家を作るのに魔力を出した、お前は守護獣でこの家を守っている…」

「あぁ、そういう事か、悪いね。金でも食糧でも何でもいい出来ること教えてくれ、どんな些細なことでもいいから」

これから飛竜退治だ、仲間は多いほうがいい。


「えっと、戦士として食糧を狩りしてくるよ」

「私は、裁縫とか得意ですっ!」

「料理なら…」

「なんだ、戦士はお前だけか、ついて来い」

ウガルは戦士の女の子を連れ外に出て行った。


「それじゃ、これなんとか出来ない?」

狼に襲われたとき剥いだ皮を出してみた。


「はい、大丈夫ですっ!」

僧侶の女の子は意気揚々と皮鞣なめしし用の道具を背負い袋の中から出し始めた。

普通持ち運びするもんなんだろうか、コンパクトに畳まれていて使いやすそうだった。


「君は、そうだな…ケットシー」

「はぃ、なんでしょう?」

「この子の料理を見てくれ、そろそろ夕食だしあるもので人数分」

「畏まりました!」

「それじゃよろしく…」

魔法使いの子は、ケットシーに連れられて台所に向かう。


「さて…」

俺はやる事なくなったから武器の手入れでもするか。

小一時間が過ぎた。


「はは、ウガルあんたやるね、あんなのを仕留めるなんて」

「お前こそ、戦士だ。正直、舐めてた」

二人は猪二頭とウサギ一羽を狩ってきた、他にも魔獣を仕留めたらしく魔石が大量だ。


「あらあら、すごいですねっ!?」

「ミーシャ、いつもの頼む」

「はいっ任せてっ♪」

戦士の子は僧侶の子に獣皮を渡した。

見事に綺麗に捌いていく、何を信仰する僧侶なんだろう?

深く考えない事にした。


「皆さん、お揃いですね?」

「…料理出来ました」

運ばれてきた料理は、見た目は合格だ。


「それじゃみんなっ手を合わせてっ!」

「神の祈り?やめようよ、そういうの…」

「?」

「ちゃんと頂きますしてからっ!」

「あぁ、そういう事か…」

「…頂きます」

なんか久しぶりだな、こういうの。

賑やかな食卓は、質素ながらも温かい雰囲気だった。

なんだろうないつもよりなんだかおいしく感じた。


「ご主人さま、どうぞ」

「あぁ、ありがとう」

一人で物見用バルコニーから空を見上げているとノアが紅茶を持って来てくれた。

なんでも魔法使いの女の子が持っていたものを分けて貰ったそうだ。


「おぉ、ここにいたのか…」

「どうだ、使えそうか?」

「思ったより使える」

ウガルがそういうのなら大丈夫そうだ。


戦士の女の子マールは、辺境の村出身で狩猟に長けている。

戦士と言うより斥候スカウトに近い、罠を作るのが上手い。


僧侶の女の子はミーシャ、剣聖の女神の巫女見習い。

実家が鍛冶屋で武具の手入れが得意だそうだ。

手入れレベルなんてものじゃなくパーティの武具は彼女の手製と聞いた時は吃驚した。


魔法使いの女の子、シャッターシールは、ごく普通のごくありふれた家庭の出身なので詮索しないでと念を押してきた。

シャルと呼ばれている口数少ない子で、料理は極上だった。


正直、男の仲間が欲しいとちょっとだけ思った。

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