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第89話 長寿犬
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
散歩をしていると、『ごまだんご』の飼い主のお婆ちゃんとすれ違った。
おぅ、今日も元気そうで何よりだ。
先日は、お野菜ありがとうございました、とかパパさん話しだした。
お礼するのはいいんだけど、話、長いんだよね、このお婆ちゃん。
オレはパパさんの足元で伏せをして待った。
ふわぁ。
ちょっと大あくび。
しばらく待機だからね。
どうやら『ごまだんご』が十五歳になったんで、町から表彰されるらしい。
ほぅほぅ、そりゃめでたい。
ところが。
オレが伏せをしながら何の気無しに聞き耳を立てていたら、お婆ちゃん、とんでもないことを言い出した。
うちの自治体では、事前に犬の写真を提出しておくと、表彰状にその写真を載せてくれるらしくって、その提出用の写真を撮って欲しいんだって。
パパさんがしょっちゅうカメラを持ってるからなんだろうけど、あぁあぁ、パパさん、安請け合いしちゃったよ。
知らないかんな、オレ。
どんまい、パパさん。
そして……知らないかんな、オレ。