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第87話 雷
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
およ? なんか涼しくなってきたぞ。
オレは急に吹き出した冷たい風に、思わず立ち止まった。
夕方の散歩中に、いきなり空の様子が変わり始めた。
完全に日が陰っちゃってるもん。
頭上に浮かぶ、モクモクの雲なんて、真っ黒だ。
しかも、遠くでゴロゴロ鳴ってる音がする。
うわ、ポツリときたぞ。
雨だ。
パパさんがリードを引っ張る。
よし、家までかけっこだな。
任せとけ!
家に着いた途端に、本格的な雨になった。
そりゃもう、すっごい勢いで降ってる。
オレはブルブル身体を揺らして、雨を払った。
パパさんもタオルで頭を拭きながら、本格的に降り出す前に帰ってこれて良かったな、とか言って笑ってる。
次の瞬間。
ドドーーン!!
わわわわわわ!!
パパさんと一緒に大慌てさ。
どうやら近くに落ちたらしい。
ホント、無事帰れて良かった。
どんまい、パパさん。
そして今夜は雨が降る。