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第80話 木、いりませんか?
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
ブッブー。
パパさんが庭でビニールプールの残骸を片付けていると、家の前の道路に、大きなトラックが止まった。
誰か来たよ?
オレはパパさんを見上げる。
トラックからオジサンが一人、出てくる。
庭に住人がいたことに気付いたようで、オジサンは玄関に回らず、フェンス越しに話し掛けてくる。
木、買わない? だって。
なるほど、トラックの荷台に大きくて長い木が一本、デンと載っている。
え? これを買えと?
いつもなら、インターホン越しに訪問販売を断れるパパさんも、直で交渉に来られると対応に困ってしまうらしい。
あわあわしている。
そんなパパさんを見かねてか、ママさんが来て、きっぱり断った。
おぉ、ママさん、カッコいい!
二の句を継がせないキッパリとした口調で断ったので、オジサン、すぐ次の家に行っちゃった。
パパさん、苦笑いを浮かべてるし。
なっさけないなぁ。
どんまい、パパさん。
そして今日も日が暮れる。