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第74話 お刺身
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
夜になって、いきなり人が増えた。
ママさんの親戚たち大集合だ。
和室にローテーブルが一直線に並べられ、その上に乗り切らないほどのご馳走と飲み物が乗せられる。
宴会だ、宴会だーー!
オレと『しらたま』は、大人たちがご飯を食べたり、お酒を飲んだりしている中、お子さまたちと一緒に過ごしていた。
ママさんのお姉さんが連れてきたお子さまたちだ。
ワン、ワン!
内緒だよ、エヘヘ、と言って、お子さまがテーブルの下でオレに何かを差し出す。
小皿に乗った赤いモノ。
うま、うま、うまーー!!
何これ? 何これ?
マグロ? マグロの刺身っていうの?
もっと頂戴!
オレは、テーブルの下から這い出して、お子さまの隣でおすわりをする。
おかわり、まだ?
やば、ママさんに気付かれた!
誰か、みたらしに何か食べさせた? だって。
もちろん、オレは知らんぷりをしたさ。
お子さまと、そっとアイコンタクトしたけどね。
内緒だよ?
分かってるって。
美味いな、コレ。
そして今日も夜が更ける。