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第70話 蚊帳
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
お、緑色の絨毯だ。
久々、来た！
この、緑色の絨毯さ、なんかいい匂いするんだよね。
畳っていうんだろ？ 知ってるよ。
去年教わったからね。
家には畳部屋ってのが無いからな。
でもオレ、い草の匂いってやつ、結構好きなんだ。
お、カーテンきたぞー。
めちゃめちゃ向こうが透けるやつー。
これはね、蚊帳っていうんだ。
物知りだろ？ オレ。
実は、これも去年吊ってもらったんだよ。
この、外に出れそうで出れない感がいいんだよな。
オレは区切られた中を、ぐるぐると歩いてみた。
そういえば去年、この蚊帳ってのを巡って、何やらトラブルがあった気がするんだけど、何だっけ。
ま、いっか。
えーい！
オレは前足を出して、カヤに触った。
ピリピリピリピリ……。
パパさんとママさん、大慌てだ。
おもしろーーい！！
どんまい、パパさん。
そして今日も夜が更ける。
