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第62話 夏祭り
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
オレの朝は早い。
日が昇ると同時に起き出し、パパさんを運動させる準備をする。
いつも言っているだろう?
パパさんがオレを散歩させているのではない。
オレがパパさんを運動させているんだ。
今日も、いつものように朝早く起きると、珍しく、パパさんの方が早く起きていた。
ところが今日に限ってパパさんは、いそいそとお出かけの用意をしている。
ん? あれ? 散歩……じゃないの?
どうやらパパさんは、オレの散歩をママさんにお願いして、今日は一人でお出かけするらしい。
オレは盛大にアクビをするママさんと一緒に、玄関までお見送りに出た。
チェックのシャツにジーパン。頭にはバンダナ。
背中には大きいリュックを背負っている。
パパさん、ご機嫌でこちらに笑顔を向ける。
歯、光ってるし。
……くそダサい。
で、どこ行くって?
ママさんが苦笑いしながら教えてくれた。
薄い本を買いに行くんだって。
……何だかよく分かんないけど、まぁ、行ってらっしゃい。
がんばれ、パパさん。
そして今日も日が昇る。