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第57話 棒
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
こ、これは……良い棒だ!
オレは散歩途中、木の枝を拾った。
反りの角度、長さ、色、申し分ない。
思わず見惚れてしまう。
パパさんが、やめなさいって言ってるけど、てんで無視だ。
この棒の価値はオレにしか分からない。
やれやれだ。
オレは咥えた。
うん、思った通り、噛み心地も抜群だ。
咥えながら歩く。
なんて言うか、こういう良いモノを咥えながら歩くと、見慣れた景色も違って見えるから不思議だよね。
そうしてオレは、今日の散歩を上機嫌で終わらせた。
ハっ!!
オレは夜中、目を覚ました。
そういえばあの棒、どうした?
……帰宅したときは咥えてなかったぞ。
まさか、途中で落とした?
あぅーー。
どんまい、オレ。
そして今日も夜が更ける。