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第44話 シャンプー
オレの名前は『みたらし』。
二歳の柴犬だ。
たっだいまー。
しっぽ、ふりふりーー。
あー、楽しかった。
やっぱりね、用水路に浸かると気持ちいいよね。
こう、身体に沿って水が流れていくのがいいんだよ。
え? 足が泥だらけ?
いいの、いいの!
気にしなーい。気にしなーい。
ひょい。
ん? なになに?
なんかパパさんに抱え上げられちゃったぞ?
こらこら、どこに連れて行く。
ちょ、ちょちょちょちょ、ちょっと待って。
そっちはお風呂じゃないか。
お風呂入るだなんて、聞いてないよー!
シャンプーだ!
わぁ、やめろぉ!!
オレの身体が固まる。
微動だにしない。
……無の境地とは、こういうことを言うのだな。
どんまい、オレ。
そして今日も日が暮れる。