第361話 クリビツテンギョウ
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――イガラシ氏! イガラシ氏! なんで言ってくれなかったでゴザルか! もう拙者、クリビツテンギョウでゴザルよ!!
え? え? なんて? あ、ビックリギョウテン、か。
パパさんの編集部屋の前で寝転んでいたオレは、PCの向こうから聞こえてきた大声にビックリして跳ね起きた。
パパさんがスカイプを繋いだ途端に、大興奮のワタナベシさんの声が聞こえてきたのだ。
だがそれは、もはや『聞こえた』というより、『轟いた』のレベルだ。
――ジュンちゃん、話が見えない。何のこと?
さすがのパパさんも素に戻って困惑顔だ。
――またまたぁ! なんだかんだ言ってコウちゃん、例のイラストコンテスト出してんだもん。賞まで貰っちゃってさ。水臭いなぁ。
――はぁ?? え? あれ、賞獲ったの? ウソだろ?
――あれ? ……マジで忘れてたん? うん、奨励賞獲ってたよ。名前載ってる。ゴメン、先に結果知っちゃって。
――うわ、ホントだ! すっげーー!!
どうやら、パパさんが何かのイラストのコンテストに応募してたのが、賞を貰ったと、そういうことらしい。
とりあえず二人して大興奮で話してる。
良かったな、パパさん。
そして今日は、お酒が美味しいぞ、きっと。