第354話 アキレス
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
パパさんが何やら匂いを嗅いでいる。
――んー、独特の臭みがあるけど、『みたらし』、本当に食べるかなぁ。
ん? オレのオヤツ? いいからちょーだい!
――評判だからって買ってきたけど、『くるみゆべし』クンのドッグフードみたいにまた誰かにあげちゃうことにならないといいなぁ。
もぅ! いいから早くソレよこせよ!!
パパさんが探るような目で、オレの前にジャーキーを置く。
でも、いつものジャーキーじゃないっぽい。
クンクン。……パクっ。
うおー、硬ぁぁぁぁ。何だこれー。
くっちゃくっちゃ。くっちゃくっちゃ。
あ、これ美味いぞ。でも、長時間掛けて食べる感じなのかな。
くっちゃくっちゃ。くっちゃくっちゃ。
――おぉ、いけそうだな。結構夢中で食べてる。それな、アキレスって言って馬の腱の部分を使ったジャーキーらしいんだけどな? まぁ喜んでるならいいか。
そう言ってパパさんはオレが夢中になって噛んでいる様子を撮り始めた。
美味いぞ、パパさん。
そして、袋にたくさん入ってることだし、しばらく楽しめそうだ。