第351話 おくすり手帳
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――ただいまー。いやー、混んでた混んでた。思った以上に時間食っちゃったよ。
病院から帰ってきたパパさんが、居間のテーブル上に薬の入ったビニール袋を放った。
パパさん、胃腸炎の薬を貰いに病院行ってたんだよね、朝から。
にしてはご機嫌だな、パパさん。
こういうときは何か隠し玉があるんだ。
ママさんが薬の入った袋を仕舞おうとして、中に入っているモノに気付く。
――なにこれ!!
それは、おくすり手帳だった。
いや、よく薬局で貰えるだろ? あれ。
でもそれは、絵柄が柴犬のイラストのものだった。
それは、表紙、裏表紙両方に、お座りしてたり伏せしてたりと様々な柴犬のイラストが、所狭しと描かれていた。
――いや、ちょうど最後のページでさ。薬局でお好きなの選んでくださいって何種類か新しいおくすり手帳を見せられたんだけど、ひと目で気に入っちゃってさ。それにしたってわけ。
――いいな、いいなぁ。わたしにちょーだい。
――ダメダメ、オレも気に入っちゃったんだもーーん。
良かったな、パパさん。
そして、どうでもいいけど、柴犬が好きなんだね、ホント。