第341話 強風
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
ガタガタ、ガタガタ。ガタガタ、ガタガタ。
市場から帰ってひと眠りしてたオレだったが、シャッターがガタガタ揺れる音に慌てて飛び起きた。
リビングに行くとパパさんとママさんが笑いながらTVを見ている。
――お? 起きたか、『みたらし』。ん? しっぽが垂れてるな。どうした?
くぅーん、くぅーん。
ねぇパパさん、誰か来たんじゃない? ガタガタ音がするよ?
パパさんが、怯えるオレを優しく撫でてくれた。
――あぁ、風に怯えているのか。心配無いよ、『みたらし』。ただの風だ。今日は風が強いんだよ。
寝ている間に夜になったからシャッターを閉じたんだろうけど、お陰でシャッターがガタガタ風で揺れるってことか。あぁでも、怖いよぉ。
――おいで、『みたらし』、怖くないからねー。
今度はママさんが、オレを撫でてくれた。
くぅーん、くぅーん。
――怖がりだねぇ、『みたらし』は。そんなんじゃお兄ちゃんになれないぞ?
ママさんが笑う。
いいもん、お兄ちゃんになれなくっても。怖いものは怖いんだい!
早く風、止まないかな、パパさんママさん。
そして今夜は、いつまでもシャッターがガタガタ揺れ続ける。