第337話 ママさんとお腹の子
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――えっと、『この子』とはどういうことでしょうか?
――本当はちょっと前から分かってたんだけど、プラモデルだ何だってちっとも真剣じゃないから言えなかったのよね。言うタイミング逃しちゃった。
――そ、そそそそ、そうだったんですか。
――本当はこういう伝え方じゃなくってちゃんと伝えたかったんだけどね。まぁそのせいかな。心のコントロールが効かなくなっちゃって。でも、お陰で頭も冷えたし、わたし一人だけで勝手に決めていい話でも無いから、こうして戻って来たわけよ。
オレはパパさんとママさんが会話をしている間、ママさんの周りをぐるぐる回った。
さぁさぁ、撫でて、撫でて!
ママさんがオレを引っくり返してお腹を撫でてくれる。
うはぁ! これこれ!
――おい、『みたらし』、そのくらいにしとけ。ママは今、大切な身体なんだから、程々にしなさい。
ん? パパさん、何言ってんだ? 久々にママさんに会えたのに、嬉しくないのかよ。まったく、素直じゃないなぁ。
――まぁいいわよ。んじゃま、テコ入れしましょうか。なんたってこの先、家族が増えるんだから、今から何とかしないとね。
がんばれ、パパさん。
そしてママさん、もっとオレを撫でてくれぇぇぇぇ!