第336話 ママさんの帰還
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――ただいまー。
――ママ、ママ、ごめん、ごめんなさい。離婚だけは勘弁して! お願い!
――しないわよ。こっちも頭冷えたし。ま、ちょっと話し合いましょう。
リビングでパパさんとママさんが向かい合ってテーブルにつく。
やったーー!! ママさん帰ってきたぞぉぉぉぉ!!
――あのまま前の会社で働き続けてたら早晩倒れて、下手したら死んじゃったかもしれなかったってことも思い出したし、パパがあのとき会社を辞める決断をして本当に良かったと思ってる。うん、それは本当。次の職業がYouTuberってのは疑問符ついたけど、『みたらし』と四六時中一緒にいることで癒せればいいなって思ったのは確かだしさ。
そんなものあるのか。
まぁそれはさておき、ママさん帰ってきたことだし、撫でて撫でて!
ママさんにジャレつくと、ママさんがはいはいと言いながら撫でてくれる。
――ただ、収益が全く無いというのも問題なので、ここからはわたしも口を出させて貰うわね。『バズる為には』を真剣に考えましょ。この子の為にも。
ママさんがおなかをそっと撫でる。
……え?
――え? えぇぇぇぇ!?
うわぉ。爆弾発言だ。こーりゃパパさん、真剣にならないと。オレも及ばずながら協力するぞ!
がんばれ、パパさん。
いずれ生まれてくる子供の為に、今日から必死になれ!