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第334話 ママさん、大噴火
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――で? 収益、どれくらいなの? 今。
ママさんの問いに、リビングで正座したパパさんが押し黙る。
ピクっと眉を動かすと、ママさんは勢いよくテーブルの天板をパシンと叩いた。
パパさんが渋々口を開く。
――ゼロ……です。
――は?
――ゼロです!
パパさんがヤケクソのように叫ぶ。
ママさんの目が吊り上がる。
――じゃ、どうやって生活費を工面してるのよ!
――いや、だから、貯金を切り崩して……。
ママさんは大きなため息を一つつくと、無言で寝室に入った。
しばらくゴソゴソやっていたかと思うと、旅行に使っている大きなトランクをゴロゴロ転がして家を出て行ってしまった。
え? おい、パパさん、どうすんのよ。
ちょっとパパさん。
泣いてる場合じゃないよ? ママさんどうすんのよ。