第331話 しらたまとおばあちゃん
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――もぅ、聞いてよ! ホント頭にきたんだから!
――はいはい、何よ、お母さん。
さっきからママさんがどこからか掛かってきた電話に応対していると思ったら、どうやら相手は田舎に住んでるママさんのママさん。つまりおばあちゃんらしい。
――でね? ほら、家の近くのホームセンターに『しらたま』を連れて行ったわけよ。あんたも知ってるでしょ? あそこのホームセンター。
――うん、あそこのね。んで?
――カートに『しらたま』乗っけてドッグフードどれを買おうか迷ってたら、スーってカート押した紫色の髪をしたおばあちゃんが来てさ。ちょっとあんた聞いてる?
――聞いてるって。それで?
TVを横目で見つつ適当に聞き流していたママさんが慌てて返事する。
おばあちゃん凄い。こっちの様子を電話線越しに見ているみたいだ。
――カートに綺麗にトリミングされたトイプードルを乗っけたおばあちゃんが言うわけよ。『あら、雑種でもドッグフード食べるのね』って。もぅ頭きちゃってさ。何も買わずに店出ちゃったわよ。
――色んな人がいるわよ。『しらたま』の良さはわたしが知ってるから、あんまり怒らないの。
どんまい、おばあちゃん。
そして心配するな。『しらたま』の良さはオレも知っているぞ。