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第329話 財布が無い!
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――無い! 無い! 財布が無い!!
散歩中、急にパパさんが慌てだした。
え? さっきカフェに寄って、オープンテラスでコーヒー飲んでたよね? コーヒー買ってたってことは、あの時までお財布あったってことだよね?
オレはパパさんに連れられて、行きに寄ったカフェに再度行った。
パパさんがオープンテラスの、自分が座っていた辺りを探し回っている。
――この辺りでお財布、見てませんか?
――いいえ?
パパさん、血相を変えて、お客さんや店員に財布のことを聞きまくっている。
他に落としそうなところ、あったかなぁ。
と、パパさんが突然。
――あ、あった!
パパさんはトレーナーのポケットからゆっくり財布を出した。
そっか、ポケット付きのトレーナーなんて普段着ないもんね。ズボンのポケットばっかり気にしてたから気づかなかったのか。
パパさんは顔を真っ赤にしつつ、店員さんや他のお客さんにお礼を言って店を出た。
――もう、あの店行けないや。
どんまい、パパさん。
何はともあれ、財布が見つかって良かったよ。