第324話 電話
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
トゥルルルルルーー、トゥルルルルルーー。
――はいはい、ちょっと待ってね。
家の固定電話が鳴っていると、ママさんが慌てて駆けてきた。
――はい、イガラシ……、あぁ、なんだお母さん、どうしたの?
どうやら相手はママさんの実家らしい。
何やらママさんが話している。
と。
『ワンワンワンワン! ワンワンワンワン!』
突如発せられた激しい犬の吠え声が、電話のこっち側にまで聞こえてくる。
何というか……やかましい。
――ちょっと何? 聞こえない! 誰か来たの? 『しらたま』、吠えないの! え? 母さん、今何て言ったの?
『ワンワンワンワン! ワンワンワンワン!』
そっか。そういえば『しらたま』は誰か家に来ると吠えてたな。……にしてもうるさいなぁ。電話越しでも聞こえるって、どんだけボリューム大きいんだよ。
――いや、だから! ちょっと『しらたま』、うるさい! なんて?
ママさんはしばらく喋ってたが、結局諦めたらしく、電話を切ってしまった。
はて。何の要件だったんだろうね。
どんまい、ママさん。
そして、『しらたま』、うるさい。