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第322話 切り傷
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――あぁぁぁ! 指が切れたぁぁ! 死ぬ! 死んでしまうぅぅぅ!!
キッチンからパパさんの悲鳴が聞こえる。
どうした、パパさん! 今行くぞ!!
慌てて走って見に行くと、ちょうどママさんも着いたところだった。
――あらあら、どこが切れたの? ほら見せて。
――ここ、ここ。包丁で切っちゃった。
パパさんの左手の中指の辺りから血が垂れている。
料理をしようとして包丁で切ったらしい。
あぁあぁ、普段やり慣れないことをするからこうなるんだよ。
――指が、指が! 指が落ちて無くなっちゃうーー!!
――これなら大丈夫。見た目ほど深くないわ。絆創膏で止血出来るから慌てなくっていいわよ。はい、落ち着いて落ち着いて。
散々大騒ぎした挙句、絆創膏一枚で止血出来たパパさんだったが、よっぽど痛かったのか、まだ泣いている。
ちょっとパパさん、男でしょ? しっかりしなよ。
どんまい、パパさん。
そして、パパさん、ショックで涙目だ。