第317話 シーサー
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
『ごまだんご』と別れた後、しばらく行ってオレはちょっと立ち止まった。
この先の家の前に、でっかいラブラドールレトリバーがいるはずだ。
覚悟を決めて歩くと、案の定いやがった。
ワンワン! ワンワン!
ふっふっふ。吠えてやったぜ、パパさんの股の間から。
これでオレたちに襲い掛かってくることは無いはず。
だが、パパさんは苦笑しつつ、気にも留めず、リードを持ったまま歩いている。
パパさんが噛まれる可能性だってあったんだぞ? 感謝して欲しいもんだ。
ところが、ふと空を見上げてオレは最大級にビックリした。
左右の門の上にワンコが二匹、乗ってる!!
オレは急いでパパさんの後ろに行くと、また、股の下から吠えてやった。
ウゥゥゥゥゥゥゥ、ワンワンワンワン!
――あぁ、シーサーだ。ラブラドールの置物に続いて、シーサーの置物も置くようにしたんだな、この家。
どうだ、思い知ったか、オレの吠え力! パパさんの手前だ。この程度で許しといてやる。ありがたく思うんだな!
――おい『みたらし』、ぶるぶる震えてどうした。さ、行くぞ?
やってやったぞ、パパさん。
そして今日もオレは胸を張って歩く。