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第315話 記憶
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
前にさ、オレ、氷を庭に埋めたんだよ。
暑い日でさ。
で、そろそろ食べようかなって思うんだ。
ほら、悪くなっちゃうといけないだろ?
宝探しの気分だよな、これって。
でも、どこに埋めたんだったかなぁ。
オレは庭を端から端までウロウロ歩いた。
歩きながら周りを見回す。
この木がここにあって、芝生がここまでだろ? ってことは、この辺りか。
よしよし、そら、出てこい!
オレは前足で、目当ての場所を一生懸命掘った。
だが。
なんで無いんだ。んー、思い違いかな? あっちだっけかな。
だが、そこにも氷は無かった。
時間を掛けて候補地をいくつか掘ってみたが、どれもハズレだった。
おっかしいなぁ……。
どんまい、オレ。
そして氷、どこやっちゃったかなぁ。
しょぼぼん。