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第312話 パパさんのイラスト
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――イガラシ氏、いいコンテストを見つけたんでゴザルよ。締め切りまで一週間しか無いんでゴザルが、今からやってみる気は無いでゴザルか?
――ワタナベ氏……いや、ジュンちゃん、オレもう絵を描く気は無いんだけどな。
――コウちゃん、オレはコウちゃんの絵、好きなんだよ。コウちゃんならプロでだって通用するって。実際、編集さんの目に留まって掲載寸前までいってたじゃないか。
――でも、チャンスは生かせなかった。だろ?
――それは、会社と同時進行だったから無理がたたって……。ジュンちゃん……。
パパさんが編集部屋でお友達のワタナベシさんとスカイプで話している。
また絵の依頼だろうか。
オレはパパさんの隣に行った。
パパさんが優しい目でオレをわしゃわしゃ撫でてくれる。
――そんな焚きつけないでよ、ジュンちゃん。ま、その気になったら、ね。
――ま、待ってるよ、コウちゃん!
よく分かんないけど、頑張れ、パパさん。
そしてパパさんは物思いにふける。