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第306話 雨ポツポツ
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
背中にポツポツと雨が当たる。
言うほど強く無いから全然平気なのだが、念の為、パパさんは傘を差している。
――おぉ、ここにも桜が。見事なもんだ。
歩きながら道路沿いの桜を見つけたパパさんは、そちらに近寄り、枝に向かってスマホを構えた。
本当だ。綺麗だね。
見ると、桜の花びらに雨が付いて、何とも言えない幻想的な雰囲気を醸し出している。
まるで別の世界に迷い込んだみたいだ。
ブロロロロロ。
車が傍を通っていく。
雨が音を吸い込むのか、世界がとても静かだ。
……さ、散歩を続けようか。
綺麗だね、パパさん。
そして、たまにはこんな日があっていい。