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第305話 肩透かし
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――お! 今歩いてた二人組の女性、こっちに来るっぽくない?
――え? やだ。宗教の人たちかしら。荷物を家に運び入れているときに声掛けられると面倒だから、さっさと家に入っちゃいましょ!
――オーケー、任せて!
パパさんは車をガレージに入れると、急いで買い物の荷物を玄関に運んだ。
オレも慌てて玄関の内側に入る。
あとは、居留守を装って知らんぷりしてやり過ごせば、回避成功だ。
オレは戦闘態勢になって、部屋中を駆け回った。
いつでも出れるからね、オレ!
――ちょっと『みたらし』、静かにして!
あやや、怒られちゃった。
ところが。
五分待っても十分待っても、さっきの女性たちは一向に家を訪ねて来なかった。
インターホンのモニター越しに外の様子を眺めてみるも、それっぽい姿は見えない。
結局この日、女性たちは家には来なかった。
何だったんだろうね、パパさんママさん。
そして今日は、肩透かしを食らったからか、微妙な空気の一日っぽいぞ。