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第304話 まりも再び
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
取るな!
オレはパパさんがこっそり捨てようとしたまりもを奪うと、口に咥え、部屋の隅っこに行った。
オレの友達だぞ!なんで捨てようとするんだよ!
ワンワン!
オレはパパさんに向かって吠えた。
パパさんが、困ったような顔をする。
――あのさぁ、『みたらし』。これもう毛もすっかり抜けちゃったし、ずっと咥えて遊んでいたからか見ろよ、ボロボロだろ? 最初はそれでも毛のせいで微かにまりもっぽかったけど、今じゃもう、元の姿がさっぱり分からないもんな。だからさ。新しいの買ってやるからいい加減こいつ捨てちゃわないか?
嫌だ! コイツはオレの友達だ! 誰にも渡さないぞ!
ウーーーーーーー!!
オレの威嚇にパパさんが呆れたような顔をする。
――あぁもう。じゃいいよ! その代わり、新しいボールは買ってやらないからな!
あきらめたパパさんがリビングに戻る。
ふん! 新しいのなんかいらないよ。オレはコイツとずっと一緒にいるんだ。
どんまい、オレ。
そして今日も、オレはまりもを口に咥えて離さない。