第277話 恩恵
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
――ん? 再生回数が増えてる。何でだ?
秘密の編集部屋でPCをいじっていたパパさんが不意に声をあげた。
すぐ近くで寝そべっていたオレは、すかさず傍に行く。
パパさんどうした? 何かあったのか?
――あ、コメントも幾つか来てる。えー、なになに? 走り回ってる『もももち』ちゃんも可愛いです! だって。あとは……『もももち』ちゃんのところから飛んで来ましたが、どういうご関係なんですか? なるほど。『もももち』ちゃんの飼い主さんも、この前のホテルでの写真をUPしたんだな。どれ、見に行ってみよう。
パパさんがキーボードをパチパチっと叩くと、チワワがいっぱい写っているサイトに辿り着いた。
――これか。あーホントだ。『みたらし』、お前も写ってるぞ。
ホテルの庭で撮った写真だな? うんうん、良く撮れてるな。
そこには、ホテルの植え込みの前で大人しく並んだオレと『もももち』の姿があった。
これでパパさんの動画の再生回数も少しは増えるだろ。
ま、もって三日ってところだろうけどさ。
良かったな、パパさん。
束の間でも、バズりに喜ぶがいい!




