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第271話 水の生物
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
さ、パパさん。早くダンボールを開けてくれ!
オレは昨夜届いたというダンボールの前で、お行儀よくお座りした。
そう。これはオレ宛に届いたサブスクってやつだ。
中にオレ用のオモチャが入ってるんだ。
パパさんがダンボールを開け、中に入っていたぬいぐるみをオレの前に置いた。
灰色で鎧のような身体に二本の触覚。
わぁ! ダンゴムシだ! 庭石の下にワラワラいるちっこい虫だ!
――あれ? おっかしいな。今年度のオモチャは『水の生物』シリーズのはずなんだけど……あ、そっか。これ、ダイオウグソクムシか。
パパさんが納得いったかのように、しきりに頷いている。
え? ダイオウグソクムシ? これ、ダンゴムシじゃないの? へぇ。こんなのが海の中にいるんだ。でも、見た目がちょっとなぁ……。
オレはダイオウグソクムシのぬいぐるみをそこに放置したまま、コタツに入った。
しばらくいいや。
パパさんもそんなオレの様子を見て、苦笑いをしている。
どんまい、ダイオウグソクムシ。
そのうち遊んでやるよ。そのうちな。




