第258話 鳩おじさん
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
オレはパパさんママさんと一緒に海のそばに来た。
そこは埠頭と公園が一体化している場所で、付近の住人の憩いの場所兼観光スポットとなっているらしく、人がいっぱいいた。
うちみたいに犬の散歩をしていたり、芝生の上でピクニックをしていたり、更には観光客相手の屋台まで出ていた。
潮風と陽の光。
暖かくて最高!
――おい、あれ!
――わ、鳩がいっぱい……。
見ると、トレーナーとチノパン姿のなんてことないオジサンが、鳩にエサをやっているんだけど、寄ってきたその鳩の数が半端なく、オジサンの周りが鳩の絨毯になっている。
試しに寄ってみたら、鳩が一斉に飛び立った。
あややぁ……。
オジサンがオレを見て苦笑いしている。
――す、すみません。
――あぁ、いいんですよ。すぐ戻ってきますから。ほら。
オレたちが少し離れると、あっという間に鳩が戻ってきた。
しかも今度は、鳩はオジサンの周りだけじゃなく頭に、肩にと乗っかり始める。
なんていうか、鳩まみれだ。鳩に愛されてるんだな、オジサン。
匠だな、オジサン。
そして今日から、鳩匠と名乗るがいい!




