第255話 準備
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
トランク? パパさんとママさんがトランク開いてるぞ! ねね、何やってるの? 荷物詰めて、どこか行くの? ねぇねぇ、教えて教えて!
朝早く荷物をまとめているパパさんとママさんの周りを、オレはしっぽをブンブン振り回しながらぐるぐる回った。
――これから旅行、行くわよ、『みたらし』。あんたも一緒にね。
ママさんが嬉しそうにしながら、クローゼットに着替えを取りに行く。
その間に、パパさんがリビングに置きっぱなしのオレのぬいぐるみを手に取った。
――じゃーーん、まりも、イン!
お? お? まりも、連れて行く?
パパさんがオレのまりもぬいぐるみをトランクに入れる。
――じゃーーん、茹でダコ、イン!
タコも? おぉ! タコ、タコ!
パパさんがオレの茹でダコぬいぐるみをトランクに入れる。
えっとね、じゃあ……シャケ! こいつも連れてって!
オレがシャケのぬいぐるみを咥えてパパさんの前に置くと、パパさんがニコニコしながら、トランクに入れようとする。
と、そこへママさんが戻ってきた。
――服、入らなくなるわよ? 一個だけにしておきなさい。
――えー?
えー?
だが、ママさんの冷たいツッコミも、なんのそのだ。
楽しみだな、旅行。
そして。さぁ、まだ見ぬ街に出発だ!




