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第212話 冬祭り
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
朝五時だというのに、パパさんは家の中をアレは持った、コレが無いと、バタバタ走り回っていた。
ママさんがメチャメチャ眠そうな顔でそれに付き合っている。
どうやらこんな時間にパパさん一人で出かけるらしい。
あまりに騒々しいのでオレも起きて、居間で伏せして観察することにした。
そんな今日のパパさんの服装はといえば、赤白チェックのネルシャツに黒のブルゾン。青いジーンズに指無しドライビンググローブ。仕上げにペイズリー柄の赤いバンダナを鉢巻きにして頭に巻いている。
――よし、準備完了!
えぇぇぇ? それで準備完了なのーー?
最後にパパさんは、空の黒いリュックを引っ掴むようにして、慌てて家を出て行った。
パパさんのその満面の笑顔ときたら!
――『みたらし』、もう少し寝よっか。
賛成、賛成。
そしてオレとママさんは再びベッドに潜り込んだ。
いってらっしゃい、パパさん。
そして、今日がパパさんにとって楽しい一日だといいね。




