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第192話 よだれ
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
パパさんが袋を傾けると、中から粉のようなものがパラパラ溢れただけで、後は何も出なかった。
――あれ? あれ?
ウゥゥゥゥゥゥゥ!
オレは怒りの唸りをあげた。
食べ物のことで犬をからかうのは良くないと思うな、オレ。
――待て待て待て、ちょうど切れちゃったんだよ。でも買ってあるから心配するな。今新しいドッグフード持ってきてやるからそこで待ってなさい。
パパさんが慌ててキッチンに戻っていった。
早くゴハン来ないかなーー。
――お待たせお待たせ。さ、早速ドッグフードを……うわぁ! なんだこれ!
なになに? どうかした?
――あぁあぁ、ほら、よだれが垂れてる。ツツーって。
ほへ? あや、ホントだ。気づかなかった。
いつの間にか流したよだれで床がぺっとぺとだ。
お陰で、オレがカリカリを食べている間に、パパさんは隣で床を拭くハメになっちゃった。
どんまい、パパさん。
そして、よだれ拭きさせちゃってゴメン。