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第190話 パン屋さん
オレの名前は『みたらし』。
三歳の柴犬だ。
『もなか』の家のイルミネーション見学から帰ってくると、家の前で白い服を着たオジサンと出くわした。
なんか、コックさん的な格好の人だ。なんだろ。
――あの……、うちに何か御用ですか?
パパさんが恐る恐る聞く。
――あぁ、この家の方ですか。いや実はわたし、移動販売のパン屋なんですけど、売れ残っちゃったパンをおすそ分けしようと思って、この近所の家に配ってたところなんですよ。
――え? いいんですか?
――いいんです。このまま賞味期限が切れて廃棄するの勿体ないし。
オジサンはニコニコしながらパパさんに何個かパンを渡すと、まだもう少し残ってるので他の家にも配りますと言って、そそくさと行ってしまった。
――売れ残りだけあってちょっと固めだけど、味はそんなに落ちてないよ。このレベルで廃棄だなんて、パン屋さんも大変なんだなぁ。
パン、美味いか? パパさん。
そして今日も夜が更ける。